昨年末、株式会社ポピンズ(以下、ポピンズ)が運営する都内の認可保育園で勤務する保育士が、介護・保育ユニオンに加入し、会社に対して団体交渉を申し入れました。

 

保育現場の規制緩和を推し進める、株式会社ポピンズホールディングスの会長

ポピンズは、「ポピンズナーサリースクール」という名前の保育園を運営している、保育業界大手の株式会社です。

ポピンズを傘下に控える株式会社ポピンズホールディングスの会長の中村紀子氏は、保育士の人員配置基準の規制緩和の立役者になってきた人物です。朝夕の子どものお迎えの時間帯の保育士がこれまで最低限2名は必要であったところ、1名だけでよしとする規制緩和が2016年に行われましたが、中村氏が中心となって厚生労働省に働きかけて実現させた、とインタビューで誇らしげに語っていました。

https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/17274717

実際の現場は、中村氏が言うように甘いものではなく、保育士の代わりにまだ経験の浅い保育支援員などが朝夕の時間帯に入ることで、危険な状況が起きるなど、問題となっています。

 

いつ集団退職が起きてもおかしくない、疲弊する保育現場

今回申入れをした保育士が勤務する保育園でも、人員不足の問題は深刻です。あまりの現場の大変さに職員は疲弊し、いつ集団退職してもおかしくないほどに、追い詰められています。具体的には、以下のような問題が起きています。

・1歳児クラスの担任が、時短勤務の職員一人のみとなってしまっています。そのため、次のような問題が起きています。

   まず、登降園の時間に担任がいない状態になっています。子どもの成長に一番深くかかわっている担任が、登降園の時間にいられないのは、保護者にお子さんの1日の様子を伝えるなど大事なコミュニケーションができないことになってしまいます。

また、この時短勤務の職員は担任業務を一人でやらなければいけないため、時間内に業務が終わらず、残業が増え時短勤務になっていない状態です。

いま主に1歳時クラスにサポートに入っている職員は、主任です。本来は主任として全クラスを自由に動ける立場になっている必要がありますが、そのような主任としての業務ができていません。

・0歳児クラスの担任が一人しかおらず、担任業務の負担が大きくなっています。そのため、次のような問題が生じています。

   サポートで看護師がクラスに入っていますが、看護師は本来の看護師業務をするに当たり、十分な時間が確保できていません。コロナ禍において業務が増えていますが、看護師の責任感に頼っているような状態です。また、看護師は、1歳児クラスにサポートに行くこともあったり、16時までの固定勤務なので、16時以降は他の職員の誰かがサポートに入るので、結局、クラスに入る人が入れ替わり立ち替わりになってしまい、子どもに安定的に関わることができません。

また、書類業務も分担できないので、担任に負担がかかっています。

人員不足のために、全学年で担任が十分に子どもに関わることが出来ていません。日々、落ち着かない状態で過ごしていて、大きな怪我がないのが不思議なくらいです。特に乳児クラスは安心して過ごせる環境が重要であるにもかかわらず、例えば人見知りが激しくなったり、落ち着けない園児がいるために登園を怖がる園児がいるなど、職員以上に子ども達に影響が出てしまっています。

このような状況があるため、一刻も早く人員を増員する必要があります。

具体的には、以下のことを会社に要求しています。

【要求】

(1)担任として正社員の保育士を0、1歳児クラスに補充すること

(2)来年度、十分な人員配置ができるよう約束すること。

 

「子ども達の最大の利益」を守るために 立ち上がった保育士の声

最後に、今回申入れを行った、保育士の声です。

 

(以下、保育士の声)

前年度の退職者が多いことを分かっていながら、ポピンズに入社したての施設長が配置され、産休だった時短勤務の先生が職場復帰しただけで社員の補充はありませんでした。明らかに人員配置に必要な常勤職員が不足すると予測されるのに、何の対応もないまま時間が過ぎていました。

子ども達の様子にも、担任の関わり合いの不足が見られ始め、これ以上待てないと、人事に直接問い合わせました。すると、求人を出しているが相手のいることだから、とのんびりとした返答で、園の状況を全く理解しようとはせず、保育園として大切なことは何なのか、最優先事項を履き違えているように感じました。本社が全力で対策を考えれば、どんな案でも出てくると思います。求人に頼るしか案が出ないとは放ったらかし同然です。

 辞めれば簡単なことですが、それでは自分で保育士の職を軽んじて、子ども達の最大の利益を守れないと思いました。

少ない正社員ながら先生方は知恵を絞りながら本当に良く頑張っています。

ただでさえ、神経を磨り減らす仕事にも関わらず、業務が増えても笑顔で頑張っています。体調を崩しても人手が足りないのが分かっているので休まず頑張っています。

自分の子供の体調が優れなくても園の子供達が心配で半日でも出勤して頑張っています。

常に子ども達の成長を考えています。もっと成長出来るはずなのに、手が届かず歯がゆい思いをしています。こんな素敵な先生方を誰が守ってくれるのでしょうか。疲弊するばかりで、この頑張りが報われなければ保育士の仕事は夢も希望もないと感じました。

 ポピンズの会社理念と現実の矛盾を追求し、職場環境の改善を当然の主張として求め、引いては保育士の社会的地位の確立、行政に意見を通せる立場になることを目標に、まずは一歩行動に移すことにしました。

ポピンズ側は、団交する社員は敵のように感じているかもしれませんが、私にとってポピンズは、保育園が淘汰される時代になっても、選ばれる園になってもらいたいのです。株式会社を利潤の追求だけではなく、道徳を持って当たることが社会貢献になることを直接伝え、トップダウンばかりの会社の体質を変えられたらと思っています。

思いの深さや考え方、時間の余裕など様々なので、ひとりで行動に移しました。同僚には行動を伝えながら徐々に輪を広げていこうと思っています。