保育業界大手企業・株式会社日本保育サービスに対し、横浜南労働基準監督署が、労働基準法第37条違反(賃金未払い)で是正勧告(行政指導)を出しました。同社が運営する横浜市内の保育園で働いていたDさん(22歳、女性)が、ユニオンのサポートの下、労働基準監督署へ違法を通報したため、行政が動いたのです。

 2016年9月1日付で、私たちユニオンは、同社に対し、事務作業や持ち帰り残業に対する賃金の支払い、休憩時間が取れない職場の改善などを求め、団体交渉(話し合い)の申入れも行いました。今回は、Dさんの職場の状態をご紹介します。

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○保育士になる夢をかなえたはずだったのに・・・
 Dさんは、短大を卒業した2014年の4月、日本保育サービスに赴任し、同社が運営する横浜市内の保育園に赴任しました。Dさんは、中学校の頃から夢見てきた保育士の仕事に就くことができ、期待に胸を躍らせました。ところが、就職した保育園では労働基準法が守られておらず、労働環境に大きな問題がありました。

○保育以外はサービス残業が多い~子どものために休憩がなかったり、ただ働きしなくてはならないのは当たり前??~
 保育園では残業は申告制でした。ところが、残業申請は実際に働いた通りの申請ができないようになっていました。例えば、受け持ちのクラスの保護者向けの通信。手書きでイラストも入れた通信を作成するのには、1時間以上かかりましたが、1枚当たり15分までしか残業代がつけられないことになっていました。このほかにも開園作業、閉園作業、会議、行事の準備などはサービス残業です。

○休憩時間も事務作業
 保育園では残業をしないよう、強くいわれていました。しかし、行事の準備や、保護者への連絡帳の記入などは、子どもと一緒にいるときにはできません。だからAさんは休憩時間も事務作業をやらざるを得ませんでした。

○精神的にも肉体的にも追い詰められ、休職から退職へ。
 慣れない仕事をする中で、園長からのパワハラもありました。2014年9月ころから体調を崩し始め、12月頃からは、体調不良で出勤ができなくなる日も出てきました。しかし、園長からはさらに辛く当たられました。その結果、Aさんは2015年8月に休職。11月には退職せざるを得ませんでした。その後、パート社員として同じ職場に戻ることになったのですが、体調がすぐれず休職を余儀なくされ、今も現場には戻れていはいません。

○子どもたちのために、保育士のために、ユニオンはAさんと改善を求めています。
 ユニオンに対し、全国の保育園から寄せられる相談のおよそ8割に、「休憩時間がない」「賃金が適切に支払われない」などの労働基準法違反があります。
 労働基準法は、労働者の健康と生活を守るためのもの。労働基準法が守られない劣悪な条件下で、保育士は心身の健康を害し、退職に至る事例も多いです。労働基準法違反の横行は、潜在保育士を生み出す大きな原因となっています。
 また、余裕のない労働環境は、保育サービスの質に直結し、保育事故や虐待、差別などの温床となっていることは間違いありません。

 ユニオンは、Aさんとともに、日本保育サービスに改善を要求しています。要求は「サービス残業」をなくしてほしい、「休憩をとれるようにしてもらいたい」というすごく当たり前のことです。みなさんのご支援、よろしくお願いいたします。

○メディア報道
 9月2日に神奈川県庁で記者会見し、その件が報道されました。

2016/09/03 神奈川新聞17面 「保育士の労働環境改善 ユニオンあす無料電話相談」(紙面)

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