介護・保育ユニオンは、都内の保育園「A」における問題について、運営会社である株式会社明日香(本社横浜市)https://www.g-asuka.co.jp/ に対して、団体交渉の申入れを行いました。

株式会社明日香は、保育施設運営、ベビーシッター、保育に関わる人材派遣・紹介、イベント時保育など、保育に関する様々な事業を行っている会社です。

明日香が運営するA園では、園長と主任による園児への虐待、保育士へのパワーハラスメント(パワハラ)が日常的にあり、これに耐えかねた保育士4名が組合に加入し、問題の改善を訴えています。
また、会社への申入れと合わせて、行政に対して虐待の通報も行いました。

A園での虐待とパワハラの実態

A園での園児への虐待は、以下のようなもので、非常に深刻です。

【虐待の例】※以下のものは1〜2歳児クラスに対して行われています。
・言うことを聞かない子をトイレや事務室に閉じ込める。泣き叫んでも放置する。
・午睡の時に寝ない子を、トイレに連れて行って電気を消したり、コット(午睡用ベッド)から出ずに静かに過ごすことを強いる。
・子どもが嫌いな食べ物を食べるまで午睡をさせなかったり、無理やりスプーンで口に押し込んで食べさせる 等

また、パワハラとしては、以下のようなことが行われています。

【パワハラの例】
・気分により主任、園長の指示が変わり、その時々で言うことが違う(夕方のオムツ替えの場所、散歩先の選び方等)。意に沿わないことをすると怒ったり機嫌が悪くなる為、保育士は常に主任らの機嫌を伺いながら仕事をせざるを得ない。
・たとえ園児の様子や業務に関することでも、保育士同士が話をしていると、「ちゃんと子どもを見て」と言ったり、何か仕事の指示を出したりして、保育士同士が話をするのを妨害する。
・非正規の保育士がいるときは正規の保育士は掃除をしないなど、正規と非正規とで扱いに差がある。正規の保育士が手が空いた時に掃除をしたところ、園長らに呼ばれて非正規にやらせるように注意された。
・保護者や園児の前で、保育士を叱責する。等

実は、昨年から主任による虐待とパワハラがあり、保育士たちは本部へ相談していましたが、何ら対応が取られませんでした。
また、園長もこれを知っていましたが、主任を指導することはなく、今年4月以降、むしろ主任に同調して虐待やパワハラに加担するようになりました。
そうして、虐待とパワハラがエスカレートし、このままではまずいと思った保育士たちは、虐待の証拠を集めながらユニオンへ相談し、今回の申入れに至りました。

私たちの要求

これらの被害を止めるため、私たちは以下の事項を会社へ求めています。

1、園長及び主任による園児への虐待について
(1)A園においては、B園長及びC主任により、園児への虐待が日常的に行われています。今後の被害防止のために、10月7日以降の園長及び主任の同園への出勤を停止するとともに、人員を確保し、保育が正常に行える体制を整えてください。
貴社がこれを拒否する場合、組合員4名は、10月7日以降の出勤を拒否します。
(2)園長及び主任による虐待について、園児の保護者に対する説明会を10月7日に行い、また、被害に遭った園児の保護者に対して個別に謝罪を行ってください。
(3)園長及び主任による虐待について、行政による調査に対して誠実に対応をするとともに、貴社において事実関係を調査の上、結果を当組合に報告してください。また、虐待防止策を策定し、今後の虐待防止に努めてください。
(4)組合員4名は、日常的に虐待を目撃したり、時には自らが虐待に加担させられたことにより、精神的に多大な苦痛を受けました。また、昨年秋以降、貴社東京本部のD氏、E氏に対して、主任による虐待の事実を報告し、主任への指導などの虐待防止策を求めましたが、何ら対応が取られませんでした。一連のことについて、貴社による謝罪と損害賠償を求めます。

2、園長及び主任によるパワーハラスメントについて
(1)同園では、園長及び主任による組合員たちへのパワーハラスメント(パワハラ)が日常的にあります。事実関係を確認し、結果を当組合に報告してください。
(2)組合員4名は、パワハラが横行する労働環境で働き続けることにより、精神的に多大な苦痛を受けました。昨年秋以降、貴社東京本部のD氏、E氏に対して、主任によるパワハラの事実を報告していましたが、本部からは何ら対応が取られませんでした。
一連の出来事について、貴社による謝罪と損害賠償を求めます。

上記の1(1)、(2)については、園児への虐待という事態の重大性及び被害防止という緊急性につき、直ちに対応を取るよう求めています。会社が要求を受け入れない場合、保育士たち週明け10月7日以降の出勤を拒否する構えです。

会社は、この深刻な事態を真摯に受け止め、今後の被害を防止し、子どもたちが安心・安全に過ごすことができ、保育士たちが生き生きと働ける環境を整備するように最大限の努力をしてほしいです。

安心・安全な保育園の環境を作れるように、声を上げた保育士たちをぜひご支援ください

最近、保育園における虐待が相次いでニュースで報道されています。ですが、報道などで明らかになるのは全体の一部であり、相当多くの保育現場で虐待が起こっているのではないかと危惧しています。

【参照】介護・保育ユニオンが実施した虐待に関する調査の東京新聞記事です。

保育士の虐待「見たことある」25人中20人 背景に人手不足、過重労働…ユニオン調査で判明

保育園における虐待に気づいた保育士が、実際に声を上げるには様々なハードルがあります。
内部告発によって、虐待をしている上司から逆にパワハラを受けるのではないか、職場に居づらくなってしまわないか。また、虐待を止められなかったと自分を責めたり、虐待が起こる異常な環境のためにメンタルを病んでしまうこともあります。

今回申し入れをした保育士たちも、自分たちもパワハラを受けていた中で上司へ逆らうことができず、その場で虐待を止められなかったことで自責の念に駆られています。また、これまで本部へ虐待やパワハラを訴えても何も対応されなかったことから、もし外部へ告発をした場合に自分たちが会社や上司たちから報復をうけるのではないかという大きな不安も抱えています。

そうした中で、今回、保育士たちは勇気をふりしぼって会社へ申し入れをし、行政への通報を行いました。みなさま、ぜひ保育士たちをご支援ください。

また、保育園での虐待やパワハラに悩んでいる保育士の方がいましたら、ぜひ介護・保育ユニオンにご相談ください。相談無料、秘密は厳守します。