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 2017年10月2日、反貧困ネットみやぎが主催して行ったシンポジウムにて、保育士の労働環境の現状と、待機児童の関係について発言してきました。発言内容をご紹介します(当日に話した資料を元に、ブログ用に修正・加筆したもの)。

「待機児童の解消には保育士の労働環境改善が必要」

1 待機児童の解消のためには、保育士の労働環境の改善が重要
 2017年4月1日時点で、仙台市の待機児童は232人です。これらを解消していくためには、施設数の増加の他、保育士不足という問題の解消も重要です。実際、ある認定こども園では、保育士不足のため、0歳児の受け入れを停止している園もあります。安定した保育所運営を行い、きちんと子どもを継続的に受け入れること、また適切な保育環境を維持していくためには、保育士の労働改善は、無視してはいけないと考えます。それらの状況について、実態を元に、必要と思われる政策を提言します。
 

2 実態①労働基準法違反が横行~保育の質にも悪影響~
 相談の中で見えてくるのは、残業代が未払いである、休憩が取れないなどの労働基準法違反が横行しているという実態で、保育業界から来た相談の8割で労働基準法がありました。そして、相談者の多くが20~30代です。労働基準法違反をはじめとする労働環境の悪化が、若い保育士の離職を招いていると考えています。また、保育士の低賃金が叫ばれていますが、残業代が適切に払われれば、ひと月数万円の賃金アップにもなる場合もあります。(相談の状況は、保育ポータルサイト「ほいくらいふ」にご紹介いただいたこちらの記事をご参照ください)。

・事例①『5年間で90人が離職したという、清泉学園「ゆりかご認定子ども園」』
 この園では、毎日の勤務は10時間~12時間にわたり、その間休憩もなく働くなどの長時間労働や、数多くの持ち帰り残業、園長・副園長からのパワハラなどにより過酷な労働環境になっていました。サービス残業も多く、労働基準法違反も横行していました。ある保育士の未払い賃金は2年で数百万円にも上っていました。その結果、数多くの保育士や幼稚園教諭が辞めていき、組合員が勤務していた5年間で、90人近い人が辞めていったと言います。
 なお、この園ではユニオンで団体交渉を行った結果、現在は大きく改善しています(過去記事『ゆりかご認定子ども園が反省文を掲載。現場の労働環境は改善。今後も継続してより良い環境を求めていく』をご覧ください。)。

 上記の事例のような話があり、若い保育士が次々に辞めていくので、ベテランが育っていきません。労働基準法違反が横行する中で、体力的にも精神的にも余裕がなくなり、一緒に笑ってあげられない、事務的な対応になってしまうことなどに悩んでいる保育士も増えています。つまり、労働基準法違反を放置することは、保育サービスの質にも大きな悪影響が出てしまうと考えています。

3 実態②低賃金の問題~児童福祉法は守れるが労働基準法は守れない~
保育士の多くは低賃金の状態におかれています。

・事例②仙台市内の新卒正社員の保育士の給与
 給与は総額180000円。内訳は、基本給130000円・資格手当20000円・業務手当30000円であり、そのうちの業務手当30000円は31時間分(のちに27時間分に変更)の固定残業代。「業務手当」という残業代を除けば、月給15万円ということ。数年たっても20万を超えることはないという。

 上記の給料をもらえるだけで、「もらっている方だ」と思う保育士もいるくらい、保育士の給料は低いです。保育士の給料を大きく左右するのは、行政からの運営費です。認可保育所の運営費は行政から支給されますが、この運営費は、保育所の利用児童数に応じた金額が支給されます。支給される金額の中で、国が定める、最低限度の人員配置基準は満たすことはできています。
 しかし、事業主からは、「行政からの運営費だけでは最低基準ぎりぎりしか職員の配置ができないため、休憩を与えられない」「賃上げや残業代支給は厳しい」という声が上がっていることも事実で、この背景にあるのは、制度設計の中に労働環境に関する議論が抜けてしまっていると考えています。保育士が普通に生活していけるだけの賃金が払えるような制度設計にしていく必要があります。

 また一方で、民間の認可保育所では、行政から支給される費用のうち、人件費が50パーセント以下の事業所も多く存在しています。詳細は毎日新聞の『待機児童対策、盲点 運営株式会社「人件費7割なら赤字」 保育士に届かぬ補助』(2016年10月16日)をご覧ください。
 ユニオンとしては、普通に運営している保育所において十分な賃金を支払うことのできる制度設計にすること、また一方、一部の保育所は「利益」を貯めている事業主も存在しているのが実情なので、これについては運営費の使い方などに規制が必要と考えています。

4 仙台市政としてできる限りの処遇改善を実現してほしい
 現場の声を聞くユニオンとしては、仙台市には以下のような政策が必要と考えます。

①仙台市内の保育所に、抜き打ちで労働基準法違反がないかを調査し、違反事業所に対しては是正するよう指導すること。そして、調査結果を発表し、年々労基法違反事業所を減少させることを目標とすること。

②保育士に直接届く形での、仙台市独自の処遇改善策を講じること。例えば、個別の保育士に対して家賃補助を行うなど

 ユニオンは、今後も現場の労働環境の改善に取り組みつつ、行政へも働きかけ、保育業界の労働環境の改善、待機児童の改善に取り組んでいきます。
 組合員が今回の講演にあたり寄せてくれた現場の声を下記にご紹介します。

組合員X氏(仙台市在住、30代男性、現役保育士)のコメント

「保育士の労働環境は、本当に厳しい。
 まず、ただ働きが多すぎる。保育中は事務仕事などはほとんどできないので、必然的に残業になる。でも、残業代が払われない。

 次に、給料が少ない。保育士の仕事は、子どもの成長、命、子どもの将来をあずかってる仕事。その季節でしか味わえない活動の準備、行事の準備、そのどれもが園の直接の経営利益に関わることではない。全て子どもの成長にかかわること。子どもの成長、将来にかかわる仕事は、利益がないから給料も少ないのか。子どもとただ遊んでる、そんな風に思っている人はまだまだ多いと思う。また、保育士=女性の仕事、女性の仕事=給料が少ないとみなされているように見える。保育士が必要とされているなか、男性保育士がもっと必要な時代になる。保育士=女性が行う仕事という概念が、保育士が増えない原因でもあると思う。

 さらに、園長がワンマンの園が多い。現場の声を聞かない園が多く、だからこそ辞めていく保育士も多い。もっと現場の声をきいてほしい。みんな言いたくても言い出せない人が多いからこそ、ユニオンに相談する。正直、給料や長時間労働だけじゃない。パワハラをせず、ちゃんと職員に対する配慮があれば、少しくらい残業して給料が少なくても文句を言わない保育士は多いと思う。こんな状態だから、保育環境が劣悪にもなり、辞めたくなるし、保育士辞めたあとは、戻る人も少ない。
 もっと国や市が保育士の実態に目をむけてほしい。もっと現場の状況を把握してほしい。そう思います。」

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